海を抱いて月に眠る:深沢潮
「在日」と一括りにできない複雑さを感じました
一貫して在日コリアンについて書き綴る深沢さんの作品。
やはり時代を遡れば遡るほど内容は深いなぁーと感じさせられる。
今回は在日一世の父が亡くなったことから話がはじまる。
両親、特にこの父親には謎が多かったわけだが、残されたノートを頼りに父の過去が明かされてゆく。
現在と過去を行ったり来たりしながら徐々に判る父の交友関係や日本に渡って来たいきさつやその後。それは彼の子供たちだけでなく、私たち日本人にも知り得ることのない当時の様子が綴られていた。
また、日本の戦後を在日という視点から見た様子もなかなか興味深いものがあった。愛情表現が苦手な父親が見せた別の顔など、読めば読むほど様々なものが見えて来て、なにか切ない思いも残る。
深沢さんの本を読むと、朝鮮半島の歴史についてやはり知らないことが多すぎることを実感する。
教科書で当時何が起きていたのかを知ることも大事ですが、こうして一人一人がどのように歴史に翻弄され、具体的にどのような生活をしていたか知る方が、その痛みが真に伝わりやすいように思えます。
深沢さんの作品で在日コリアンの様々な世代の考えや気持ちを教えてもらっている。
そこにには「在日」と一括りにできない複雑さがある。
朝鮮半島の動きが活発になってきている今だからこそ読んでおきたい作品でもある。