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私以外みんな不潔:能町みね子

私以外みんな不潔:能町みね子著のレビューです。

私以外みんな不潔

私以外みんな不潔

 

 

◆幼稚園の手前の太い道の交差点は相変わらずこの世とあの世とを分ける境界線のようです━━━━こんな気持ちで毎日幼稚園に向かう園児の日常を描く能町さんの私小説(たぶん)から見えてくるものは深いです。

 

感性豊かで繊細な子供が、もし大人のような言語能力を持っていたら一体どんな言葉で日常を表現するのであろうか?ほら、たまに大人がびっくりするようなこと、子供って平然と言ったりするじゃないですか。そんなちょっと見えそうで見えない世界を能町さんが形にした。

気軽に読み始めたのですが、これが案外深い。そして自分が大人目線で読んでいるのか?子供目線で読んでいるのか?視点が定まらずにいたのもこの読書の面白さでありました。

何よりもハラハラさせられたのがトイレの話。
パンツをお尻の下までおろしてじゃないと出来ない5歳児の私。普通の男の子がするような立ったままでのおしっこができません。幼稚園に通うようになってトイレが一大事になってしまったのです。床の汚さ、茶色のゴムサンダルの気持ち悪さ、小便器は上手く使えない、個室は和式。先生に付いて来てもらう事もできるけど、そんなことをしたら赤ちゃんのような行為と言われそうで無理。そこで私は幼稚園で一切、おしっこやうんちをしないと決意するのです。

この決意がどうなるのか...。もう、この決意表明を読んだところから目が離せません。
もちろんそんなことをずっと続けられるわけもなく、それはそれはハラハラさせられました。

主人公は能町さんであろうと思われる子供。絵が上手で漫画を描いていれば幸せな子。他の園児より大人っぽく、幼稚園に来る偽サンタを冷めた目で見るような子。幼稚園の(子供っぽい)生活を一歩下がったところから観察しています。親、先生、園児に向ける視線がやたら冷静で鋭い。ちょっと乱暴な男の子と遊ぶより、女の子の輪の中にいる方がまだましと言った感じも、今の能町さんに続いているものがあります。

本書で圧倒的に良かったのは、みんなから浮いた個性的な「私」に対しての先生の接し方がとてもニュートラルであったこと。大人にとっては些細なことでも子供にとってはそれが大問題で悩むことは多々ある。そこを敢えて大袈裟にすることなくすっと対応する先生に好感が持てます。繊細な子供が自ら感じ取って行く先生への安心感というものがこの話から窺えます。幼き頃に出会う大人、特に身近である先生が自然に自分を受け入れてくれる人だったという経験はとても大事なことだと感じました。

そして卒園式で先生へ向けるぶっきら棒だけど何とも言えない「私」の熱い想い、感情の動きが、いやいや、本当こっちまでホロリとさせられるのでありました。

色々考えさせられる話でもありました。子供と言う枠に大人は一括りにしがちですが、子供がすべて同じ速度で成長しているとは限らないし、楽しいだろうと思うことも全ての子供がそう感じているとは限らないということ。子供社会は大人社会と大きな意味でさほど変わらないということも感じました。

しかしこのタイトル。インパクトありますよねぇ~。
本文にもこんな一言が....。

「私は汚いものを見たとき、何かが入ってくるような気がして反射的に口を閉じてしまう。」


これ、自分も子供の時やってたなぁと苦笑。
あと、わたしはプールのトイレのサンダルが本当に苦手だったし、学校の蛇口にぶら下がっているネットに入ったレモンの形の石鹸が水でドロッとなってたのも大嫌いだったし、蛇口から直接水を飲むのも躊躇してました。学校の水回りがどうも苦手な子供でした。

そんな気持ちを言葉にしたことはなかったけれども、少なからず自分にも主人公と被る部分がありました。考えてみたらあのころの自分もどこか「私以外みんな不潔」って感じていたのかもしれません(笑)

さて、主人公の私、さぞかしオマセな子を想像していたのですが、最後のページに現れます。写真です。目のクリっとしたそれは可愛い子。今まで読んできた闇っぽい雰囲気から一気に解放されるような可愛さです。