鬼の家:花房観音著のレビューです。
京都の千本通りは、死者を送る野辺の道
京都の千本通りの側にある豪邸に纏わるちょっとホラーちっくな小説。
この家に住む歴代の人々が各章でつないでゆく。
明治時代初期からはじまる話は初代の資産家の夫が愛妻のために建てたもので、3階建ての贅沢な作りの洋館。
ある日そこへ美しい男と地味な女の夫婦が路頭に迷いこの家の前にある桜の木のところにやって来た。この二人が登場したことにより、物語はどんどん枝葉が分かれるように
人間関係もドロンドロンしてきます。
家の中に潜む鬼の存在、父と友人たちによる忌まわしい“遊戯”が行われていた禁断の部屋、吹き抜けの玄関ホールにぶらさがって揺れている不気味な人形。世代が変わっても、この屋敷にはいつも不穏な空気が漂っている。
京都の千本通りは、死者を送る野辺の道になり、千本の卒塔婆があったという因縁のある場所だそうです。
土地に纏わる因縁と人間の中にある孤独や寂しさから生まれる鬼。
このあたりの素材を上手く融合させ、美しくもゾクゾクするような作品に仕上がっていると思います。
白い紙にひたひたと朱いインクがゆっくり垂れていくような・・・
そんな観音さんの小説が持つ雰囲気は一度読むとなかなか離れがたくなるような魔力があります。