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うずまきぐ~るぐる 

*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】ロンリネス:桐野夏生

 

 

ロンリネス:桐野夏生著のレビューです。

読めば読むほど世界が縮む

 

ご近所トラブルの多い街ランキングで、まさにこの小説の舞台であろう街が上位に入っている。「そんな理由のトラブルがあるのか?嘘だろう?」と思ったのを覚えている。



その理由とやらは以下の通り。
マンション内でのご近所不倫やPTA不倫など男女トラブル多し。
子供が通うクラブチームのコーチと不貞を働く母親も。

 


とのことだ。タワーマンションが林立する場所。若い家族がこぞってやって来て住む場所だから余計にそういうトラブルも増えたのだろう。....とちょっと遠い国の話を聞いている気分だった。

 


そこに来てこの小説。まさにマンションに住む人々の人間模様を描いた作品だ。ママ友たちのいわゆる攻防戦の話は色々小説になっているのでもう馴れっこですが、ご近所同士の不倫横行にはお腹いっぱいです。ママ友がママ友の夫と関係を持ち、ママ友同士、互いに恋愛相談をし合ったり噂したりとえげつない。

 

 

 


この小説の大きなテーマは、人は幾つになっても誰と居ても「孤独」であると言うことなのだろうけれども、ここに出てくる人々はなんだか「孤独」という言葉を建前にして、安易に不倫関係に走る感じが不快。

 


特に主人公女性に言い寄って来た階下の男性・高梨の薄っぺらな言動には辟易する。そして相手の女性も、夜に子ども一人置いて出かけちゃったり。それもこれも全部好きな人に会うことに懸命すぎて何も見えなくなっているというおぞましい状況。

 


こういう人々って結局のところ常に不満を抱え込む体質と言うか....「可愛そうな自分なんだから仕方ない」と思い込むのが得意なのだ。

 


とにかく視野がめちゃめちゃ狭い。読めば読むほど世界が縮む。狭い狭い範囲でごちゃごちゃしちゃって、まるで世界はそこで完結しているかのような気分になった。

 


誰かを好きになって夢中になることは誰にだってある。時に盲目な恋愛も悪くない。
しかし、「孤独だから」「誰も理解してくれないから」ということで不倫に走るのはやはり何かが違う。孤独な自分を理解してくれる不倫相手は本当に味方なのだろうか?

 


自分で築いた家族がまるで障害物や敵であるかのように思い込み、恋に生きる自分に酔いしれる恋愛ごっこのような軽薄さにげんなりする。ラストは綺麗にまとまられているけれども、最初から抱いていた気持ち悪さは本を閉じても収まらず。

 


ということで、冒頭のご近所トラブルが、もしこの小説のように実際起きているのであれば本当に薄気味悪いものであります。

 


そういえば同じ集合住宅でも昭和の団地/社宅に住む妻たちの戦いはもう少し人情味もあり家庭的であったなぁ。有吉佐和子さんの「夕陽カ丘三号館」の女性たちと本書の女性たちをつい比べてしまった。

 


そもそも母親たちの名前が「有紗」とか、子供の名前が「美雨」「芽玖」「花奈」「真恋」など漢字一発変換できない名前がずらりと並ぶタワマン住民世代。「〇子」「〇美」などの時代から随分と時が経ち、家庭や家族に対する意識も随分変わってきているかな・・・と感じさせられた。

 


しかしなぁ。
桐野さんも執筆にあたり取材など行ってると思うので、やはり実話ベースなんだろうな。....なんて考えるとますます悶々とする。